脳出血した中高年のための怪談100物語
こんにちは。
ここで、こうしてブログを書いていて気づいたのですが、どうやら私は怪談を書いていると元気がでるらしいです。
脳の病気で疲れやすくなっている心と体が、怪談の力を借りて元気になるみたいです。
というわけで、ここで100物語してみようと思います。
あらかじめお断りしておきますが、すべてが実話怪談ではありません。
実話怪談をベースにした100物語です。
とりあえず、はじめに設定、というか、体裁を決めておきます。今回の100物語の主人公というか、狂言まわしは、鈴木誠(すずき まこと)という青年です。彼は霊能力者です。彼を軸にして100の怪異を語りたいと思います。誠自身のことについても、おいおいとでてくると思います。
怪談、怪異、奇妙な話が好きな方。ホラー映画や怪奇小説が好きな方、よろしければ、のぞいていってくださるとうれしいです。
100-1 「おしゃべりな幽霊」
誠は、ある通夜への出席を依頼された。
通夜に霊能力者を出席させるのは、故人の遺言らしい。
その霊能力者が誠だったのはたまたまで、別に坊さんでも、占い師でも、霊能力があれば誰でもよかったそうだ。
ネットの誠のHPが偶然、親族の目にとまった。
以前に数度、TVに出演していたのもプラスに働いたようだ。
「先生は、なにもさずに家にいてくだされば、それでいいのです。特に手をわずらわされることもないかと思います」
との、話だったが、故人の家で行われたこの通夜、とにかく賑やかだった。
その家に誠が入るなり、初老の男性の声が誠の心に響いてきた。
「こんばんは。このたびは、ようこそ、お越しくださいました。わたしが、今日亡くなったNです」
姿は見えないが、通夜が行われている当人のNさんが、休みなく誠に話しかけてくる。
「Nさんのこの声は、普通の人には聞こえませんよね」
「いいえ。そうでもないんですよ。わたしが話したい相手は選べるらしいんですわ」
故人の声はうきうきしていた。
「Nさん。あなたが僕を呼んだのは、こうして話をきかせるためですか?」
「まぁ夢だったんですよ。死んだら、なにかいたずらしてうやろうと思ってました。でも、死んだら、わたしの姿は誰にも見えないだろうから、霊能力者の人にきてもらわないと、わたしがなにをしても、なにも誰もわからないだろうな、と」
「自分のいたずらをみせるために、霊能力者を呼ぶなんて」
「珍しいですかね」
「ええ。聞いたことないです。で、いたずらとは、具体的になにをなさるつもりなんですか?」
「愚痴ですよ。生きている時に誰にも言わなかった家族や友人、知人への愚痴をみなさんに聞いてもらうつもりです」
「愚痴、ですか」
「どうやら、先生には隠せないみたいなんで、先生は全部、聞いてやってくれませんか?」
通夜の間中、故人の幽霊の愚痴を聞き続けるのは、あまりうれしくなかったが、これも仕事だと誠は割り切った。
「どうぞ。では、僕は聞かせていただきますよ」
「はい。観客がいる方が私も話しやすいです。では、よろしくお願いしますね」
通夜の会場であるNの家には、家族、親戚、友人などで、それでも20名ほどの者が集まっていた。
当然ながら、みな喪服に身を包んで、厳粛な雰囲気で通夜に参加している。
と、Nの言葉が響く。
「二人目の妻のKは、床上手だった。わたしが6人も子供を作ってしまったのは、彼女のテクニックがあってこそだ」
この声が聞こえたのは、誠以外は、Kさんだけだったらしい。
突然の夫の告白に、彼女は、きょろきょろと周囲を見回している。
「Kは、これといって他に取り柄はないが、まさにベットの天使だった。
わたしはある時、彼女の秘密に気づいた。
あまりに性技に長けた彼女を不審に思ったわたしは、探偵に依頼して、彼女の過去を調べたのだ。
果たして彼女は、そちらの世界では名の知られた風俗嬢だった。
業界を引退した彼女は、過去を捨ててわたしの妻となってつつましく生活していたのだ。
Kよ、わたしみたいなつまらない男と一緒になってくれてありがとう。
ただ、ただ、一つ、生きている間は言えなかったけれど、きみがその特技を生かして、外にでて働いてくれていたら、貧乏の子だくさんの我が家の家計は、もう少し楽になっていた気がする。
でも、それもきみがしたくないのならば、仕方はない。
Kよ、ありがとう。きみの夫として生きられて幸せでした」
Nが語り終えると、Kさんは大つぶの涙をこぼしながら、その場に膝をついた。
急に激しく泣きじゃくりだした彼女を、すでに成人したNとKさんの子供たちが心配げに囲んでいる。
「Nさん。いたずらってこれですか?」
「はい。こんなもの、生きてるうちは言えません」
「たしかに、そうかもしれませんね」
それから誠は一晩中、Nの話を聞きいた。誰と話していても、誠には声が聞こえてくるのだ。
ほとんどの人がKさんと同じで、1人でNの言葉を受け止めていた。
涙を流す人も多かった。
そして、夜が明けた頃。
「先生。お疲れ様です。では、言いたいことはみんなに言いましたから、わたしは行きますね。またご縁がありましたら、よろしくお願いします」
「なにもできませんでしたけど、今夜は、いや、人生、お疲れ様でした。安らかにおやすみなさい」
「では、失礼します」
Kの気配が消えた。
誠は、残された家族の元へ行き、自分の仕事が終わったのを伝えると、Kの家を後にした。
END
☆☆☆☆☆
1話めは以上です。
私がきいたり、体験してきた怪談と創作のミックスみたいな感じです。
これまでのブログ同様、ご意見、ご感想、お待ちしてます。
あー、怪談が側にいてくれて、よかった!!(ブルゾンちえみ風に)
今日も楽しいです。
と、ふととなりにいる仕事のパートナーさんに読んでもらって、「どう?ほらほら?泣けたでしょ?」と聞くと、
パートナー「???どこら辺がでしょうか・・・。ぜんぜん、かすりもしなかったんですが・・・?自分が疲れてるからでしょうか、というよりも、ひねくれてるからですかね。余裕がないんですよ・・・。はい。
あぁ~、だからチラチラ私をうかがってたですか。残念ながら、そんなじゃないですね。
そうですね、私が死んだら、もう、何もなかったと、思い残すことないようにぱっとあの世に行くんですよ。
未練がましく、しがみつてたくないんです。気持ちがぶれるの、ヤダから」
だそうです。すみませんでした。
失礼します。