本の紹介05 優しい密室 栗本薫
こんにちは。本気で本です。
今回、紹介する本は、栗本薫の「優しい密室」です。
毎度毎度、栗本薫の本ばかり紹介しているので、このブログは、栗本薫の応援ブログか? と言われてしまいそうなんですが、そういうつもりはございません。
あんた、栗本薫の本しか読んでないの? との問いにも、違いますとお答えします。
おそらく、僕がこれまでの人生で読んできた本の半数以上は、外国人作家の著作であって、全体からすると日本人作家の本はそれこそ一部の作家さんしか読んでいないと思います。
ただ、栗本薫に関しては人生の一時期、僕の読書生活は、彼女の著作に支配されていた頃がありました。十代の前半から、大学生になるくらいまでですかね、その頃、出版されていた栗本薫の本は、片端から読んでました。
今回の「優しい密室」も僕としては、自分の人生とリンクしている作品です。
この本を読んだ頃、中学生だった僕は、某大学病院に入院したりして、学校へ行けない日々を送っていました。
大学病院の精神科、神経科で何度も検査を受けていた頃です。
言葉が話せなくて、言葉ってどう使えばいいんだ? みたいな以前もこのブログの、別の記事で書いた状態におちいっていた頃です。
他人事のように書きますが、複雑な家庭環境で、神経質というか心の線の細い子が育つと、おかしくなったりもするもんです。
栗本薫の著書は、当時の僕が心を許せる存在でした。
特に、「優しい密室」はそういった僕のための物語のような作品でした。
中1の僕は、某大学病院のロビーで母に買ってもらった講談社文庫の「優しい密室」を読みはじめて驚きました。
「優しい密室」は、登場人物の森カオルの1人称で語られる推理小説です。
作中の森カオル(女性)は、自分がまだ何者でもなかった高校時代に遭遇した事件として、「優しい密室」での出来事を語ります。名門女子高校での殺人事件に巻き込まれていくカオルと、そんなカオルを見守る教育実習生の伊集院大介。
カオルは、この事件を通して、自分というものを知っていきます。
そして、伊集院大介は、彼は、栗本薫が生涯書き続けた名探偵キャラクターなのですが、いつものように優しく彼女に言葉をかけます。
伊集院さんは、痩せっぽちの眼鏡の青年で、鋭い観察眼と推理能力を持っていますが、いつも、犯人の気持ちに感情移入できてしまうような、情の深い名探偵です。
犯人をなぜ、そんなことを!! と責めるのではなく、あなたがそうしてしまった気持ちは僕にもわかります、と言ってしまうキャラなのです。
ので、事件の真相に気づいても、犯人に自首をすすめたり、気づかなかったことにしてしまうお話もあった気がします。
伊集院さんとカオルくんのコンビは、中学生の僕を励ましてくれました。
当時以上に、心の病気で苦しんでいる未成年も、成人も多い世の中になりました。
いまでも、犯人を断罪しない名探偵、伊集院大介に救われる人は多いとおもいます。
伊集院大介が登場する作品は、他の栗本薫作品同様に、いまならまだ、ブックオフなどで手軽に手に入ると思います。
優しい名探偵に会いたい人に、オススメします。