100-44 予感
100-44 予感
深夜、台所の床に横になっていた。
夏だった。
寝苦しくて、なんとなくそうしていただけだ。
フローリングの木の床がひんやりしていて、気持ちよかった。
ゴロゴロと体のむきをいろいろかえてみた。
そのうち、なにか聞こえるかな? と興味がわいて、片方の耳を床にピタリと当ててみた。
なにも聞こえない。
もっと、地下を流れる水道管の音とかがするのかと思ったのに。
やはり地の底は、静寂の世界なんだな。
カッコつけた言い方だが、静寂に耳を傾けて目を閉じた。
しばらくそうしていた。
ゴゴゴ。
最初は、小さな、小さな音だった。
地の底から声がする気がした。
耳に神経を集中する。
ゴゴゴゴ。
かすかだが、確実に音はしている。
虫の鳴き声ではない。
まるで誰か人がうなっているよう音だった。
床に耳を押しつけた。
すました。
深夜の田舎の住宅街だ。
音をだすようなものはないはずだ。
ゴゴゴゴゴゴゴ。
それは連続的に続いている。
怖いが、耳を離せない。
と、その音がだんだんだんだんと大きくなってきた。
それは人が大きく息を吐いている音にもきこえた。
ゴゴゴゴゴゴ。
途切れることなく響き続けるそれが、その音がただ音量が大きくなるだけでなく、こちらに近付いてきているのに気づいた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ。
それは、地の底から、地上にむけて上がってきている。
音はすごいはやさで大きくなっていった。
その迫ってくる勢いを感じさせる音が、
大きくなって、
近くなって、
ドン!!
衝撃がきた。
地底からきら衝撃に弾き飛ばされて、床の上ではねあがった。
家、全体が揺れていた。
地震だ。
そのまま、テーブルの下に隠れて、揺れが収まるのを待った。
地震はすぐに止んだが、地震があんな風に地の底からせりあがってくるのを体験したのは、初めてだった。
同居している家族にこの話をしたが、誰も信じてくれなかった。
そんな音は誰も聞いていないという。
そのうちに、地震を知らせる霊たちの声を聞いたとか、いつの間にかオカルト話にさせられてしまった。
後日、地学にくわしい知り合いにたずねたが、そんなんことはあり得ないと言われた。
床に耳をつけてたら、地底から音が響てくるとか、神話じゃないんだからさ。
腹の底から笑われた。
END
☆☆☆☆☆
44話めは以上です。
実体験です。
今回は短いです。平均して1話2000時ということで、こういう短いのもたまにはよくないですか?
この100物語は、私が聞いたり、体験してきた怪談と創作のミックスみたいな感じです。
みなさんのご意見、ご感想、お待ちしてます。