怖い話、奇妙な話を知りませんか?
タイトルのような問いかけを私はよくします。
そういう話が好きだからと、そこから生まれる会話で相手の意外な一面が見えたりするのが楽しいからです。
こうした話をすると、そもそもあなた(本気で本)は、霊・霊現象について、どう考えているのか? とよく聞かれるので、まずそれをお話しておきますね。
まず私は、いわゆる霊・霊現象というのは、それが体験談として語られた場合、話している人を疑いません。
それって、嘘だろ。と決めてしまえば、それで終わりですからね。
では、それが事実だったとして、どう考えるのか、といえば、例えば、カメラにもシャッタースピードがあるように、人間の目にも性能の限界があります。
X線は人間の目には見えませんよね。
視力だけでなく、聴力でも、なんでも、人間の身体性能には限界があるわけです。
でも、人というのはおかしなもので、時に、その能力を超えたことができてしまう時があります。
なぜか、普段よりもずっと早く歩けたり、テストの成績がずば抜けて良かったり、勘が冴えてて未来が視えるように予測できたりと、生きていると誰でも、そんな時を経験したことがあると思います。
なぜ、その時それができたのかわからないけど、できてしまった。
私は、霊体験の多くは、それと同じで、通常の人間の能力では本当なら見えるはずのない、聞こえるはずのないものが、たまたま見えてしまった、聞こえてしまったということだと考えています。
読んで字のごとく霊能力者というのは、それが常にできる超能力者さんなわけですね。
さて、そんな私が先日、いつものように仕事で会った若い人に、「怖い話、奇妙な話を知りませんか?」聞いてみました。
「あのー実は、ちょっと変な話なんですけどね」
おずおずと話だしてくれました。もちろんこちらは大歓迎です。
「昔、っていうか少し前に、霊能力があるっていう女の子と付き合っていたことがあるんですよ」
「ほうほう」
「それがですね。話してると、僕の過去や、いくらぐらい給料をもらってるか、とかズバズバあてるんですね」
「すごいですねぇ」
「ええ。それで、私はその能力を霊能力者の人たちから認められてて、そっちの方面で本格的に修行しないか、ってススメられてる、とか」
「なぜ、修行しないんです?」
「それは、いつでもできるから、いまはしたくない、って言ってました」
「なるほど」
「あなたは私といつか結婚する。一度、別れても、その後、また出会って、結婚する、って言ってました」
「じゃ、いまは一緒になられたんですか?」
「別れました」
これは心霊体験というよりも、恋愛話かな、と私は思いました。
特に好んで聞こうとは思いませんが、人の話を聞くの自体は嫌いでないので、じゃ、聞いてみようという感じでした。
「彼女が言った通りまたいつか出会いそうですか?」
「ないでしょう」
私は、男女の仲なんて、いつどうなるかわからないものだと思います。
「あの、結論から話しますと、彼女に霊能力はなかったんです。
彼女、僕の部屋に来た時に、僕が寝てる間に、スマホとか、書類とか全部調べてたんですよ。それで僕のこといろいろ知ってたんです。
それに気づいてしまって」
「怖いですね。
なんで、そんなことをするんですかね」
「はじめは気づかなかったんですけど、精神を病んでたみたいなんです。
僕、そういう人と付き合ったことがなくて、わかってなかったんです」
聞いているうちに、別の意味で怖くなってきました。
「彼女といると、夜中でも、「ちょっと、先生に聞いてみる」と言ってどこかへ電話するんです。はじめは、普通に医師に電話してるのかと思ってましたけど、土日祝関係なく、深夜に電話してもOKの医師とか、おかしいですよね」
「どんな病気なんですか?」
「その先生は、医者じゃなかったんです。
ある時、僕も、彼女のスマホを調べたら、請求メールがいっぱいでてきて、彼女、電話占い師にハマってて、日常の細かなこともその占い師に指示してもらってたんです」
「電話占い」
「月に何十万も使ってるんですよ。普通に精神科にも通院してましたけど、病名は教えてくれなくて、自分の仕事も教えてくれない」
「失礼ですけど、それでも別れられないほど魅力的な人だったんですか?そもそも、どちらから付き合おうとしたんです?」
「あっちです。僕はのり気じゃなかったけど、あっちが猛アタックしてきたんです」
「ルックスにひかれたとかは、ないんですか」
「別に。話してて、まぁ、おもしろかったんで。ホント、こういう人の怖さがわかってなかったんですよ」
彼は何度も、怖さをわかってなかった、と口にしました。
精神病だったり、占いにハマって巨額の消費をしている人は、多くの人からみればやはり怖いですよね。
「これだと別れるのも、難しかったんじゃないですか?」
「大変でした。ネットとかで、こういう人の別れ方とかもいろいろ調べましたよ。
彼女を一生、抱えていく覚悟は僕にはないですし」
大企業の若き中間管理職で、仕事のできる人、というイメージでしか付き合っていなかった彼の意外な一面に、私はすこしショックを受けました。
仕事はうまくやってても、みんな、プライベートは色々あるんだな。
「最後は、きみはいま、心の病気なんだから、いつかそれが治ったら、もう一度、付き合おうって言って別れました。もう付き合う気はないですけどね」
取引業者の一人でしかない私に、こんな話をしてくれる彼は、やはり正直な人だなと私は思いました。
「で、ですね、この話にはまだ続きがありまして」
「切れてないんですか」
「いまは切れましたけど、別れた後に、一度だけ、どうしても旅行に行ってくれとお願いされて」
「行っちゃったんですか!?」
「はい。あの、温泉街のSの花火なんですが、彼女がホテルから全部用意してて、先に金も払っておいてくれたんで。温泉も花火も興味あったし」
ありがちなハニートラップじゃねぇか、と私は冷たく思いました。
「行ったんですか?」
「行きました」
「はぁ」
「東京駅で待ち合わせて行って、一泊して、ここでしたら、終わりだと思って、同じ部屋で一晩、なにもしませんでした。
相手にも、「なにもしないの?」と聞かれたので、「しないよ」と、答えました」
「はぁ・・・、はい」
「で、僕がコンビニのATMでお金をおろして、彼女に旅費の僕の分を渡そうとしたら、そこで彼女がいきなり、「後でじゃなくて、ここで渡せ」って怒り始めまして、僕が「そんなコンビ二の中じゃなくて、どこか喫茶店にでも入ろうよ」と言うと、彼女は嫌がって、怒鳴りだして、コンビニでそんなの体裁悪いじゃないですか。
だから僕は彼女を無理やり連れて、喫茶店まで行って、お金をバンと投げ渡したんです。
そしたら、わざわざSまできて、なんで、僕はこんなことしてるんだろうって怒りがわいてきて、爆発しちゃいました」
「爆発?」
「はい。僕、キレると態度が全然、変わるんですよ」
「てめぇ、とか言っちゃう人です?」
「はい。その場で、彼女を怒鳴りまくって「こんな旅行、来る気はなかった」とか言って、泣かせました。で、そしたら、彼女が店から出ていったので、そのまま追わずに、店員さんに「すみませ~ん、注いいっすか?」と、トーストも注文して一人でモーニングして、のんびりしてたんです」
「あーあぁ」
「本来なら、彼女からしたら追っかけてきてほしいと思うところでしょうけど、僕は行かないですから」
結局、こういう結末なのか、と私は少し悲しい気分になりました。
他人のものでも、愛が壊れる現場は、聞いてるだけでもつらいですよね。
「で、一時間ぐらいして店出たら、まだ彼女がいたんですけど、無視して帰りました。それで、終わりです」
「なるほど」
「あれから、一回だけですけど、夢に出てきました。
夢の中でエレベーターに乗り合わせて、「あいつだ」って気づいて、逃げようとして逃げられなくて、どうしようもなくて、目と目があう瞬間に、悲鳴をあげて起きました。それが、最後です」
「なんか、壮絶な話ですね」
「ああいうのは、僕、初めてだったんです」
彼との話は以上です。
私とビジネスパートナーは、2人で彼の話を聞きました。
彼との会話の後、私が衝撃を受けたのは、
「今日の彼は、正直、なに考えてるかわからないちょっとイヤミな感じの人だけど、まさか、あんな話をしてくれるとは、思わなかったよ」
「あの人、本さんと似てますよ」
「え!?」
「本さんと似た感じの人だと思いますけど、自分じゃ気づかないですか!!」
「ええええ~!?!?!?」
なんというか、身近にいる人にそんなふうに言われるとショックです。
人は案外、自分のことはわかりませんからね。
本日は、以上です。