本の紹介08 僕が読んできた恐怖小説ベスト10 上
『ヒッチコック』ストーリーボード付き『サイコ』シャワーシーン映像
こんにちは。
本気で本です。
本の紹介です。
最近、小説投稿サイト「アルファポリス」に「脳出血の中高年のための怪談100物語」を「鈴木誠の怪談100物語」として連載しておりまして、その影響もあって他の方のホラー小説を読む機会が多いのですが、ホラーというよりも、僕としては、怪奇小説、恐怖小説と呼んだ方がしっくりきます。
私にとって、怪奇、恐怖小説は、「濃い霧の中で道に迷って、でたらめに歩きまわったあげくに、錯乱して、見えない敵に怒鳴り、叫び、ひたすら手足を振り回す」みたいな、幻想的で、でもどうしようもないイメージがあります。
幻想と狂気が紙一重のところになあって、現実は、すごく遠く、みたいな。
他の方の作品を読んでいると、やっぱりそうだよな、と思うものと、僕のイメージとは違うみたい、と感じるものがあります。
みなさんにとって怪奇、恐怖小説、いわゆる怪談と呼ぶのはどんな作品でしょうか?
今回はあえて、フィクションの枠つきで、いまでも僕の心に残っている恐怖小説を10作、御紹介したいと思います。
記事の冒頭には、恐怖映画の古典、ヒッチコック監督のサイコの名場面をつけておきました。ああした現実では関わりたくない恐怖をたのしむのも、怪奇、恐怖小説の醍醐味だと思います。
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M・R・ジェイムズは、モンタギュウ・ロウズ・ジェイムズというイギリスの小説家です。
1862年8月1日生まれで、1936年6月12日に 73歳でなくなっています。
亡くなってからすでに約80年が過ぎています。
彼の小説は、いまや近代イギリス怪奇小説の古典です。
長さ的には中短編で、古からの怪異に人が襲われるようなシンプルなものが多いです。
僕は東京創元社文庫のM・R・ジェイムズ怪談全集全二巻で、彼の作品を読みました。
絵から魔物がでてくる話などは、読んでいて、「ああ、古典だなぁ」と思いました。
近代怪奇小説の古典でも、まだ書かれたのは、100年、200年ほど前です。
歴史はそれほど長くありませんね。
ですから、僕は怪奇小説の古典を読んでいても、それほど古さを感じたことはありあません。
2つめは、ヘンリー・ジェイムス(1843年4月15日 生- 1916年2月28日没)の「ねじの回転」(1898年)です。
これは有名な作品です。
日本でも各社から本がでてますね。僕は東京創元社版で読みました。
お金持ちのお屋敷に住む少年、少女と、家庭教師の女性と、子供たちに悪いことを教える幽霊のお話です。
これは小説自体が、もっと古い小説の形、書簡小説(登場人物の手紙が小説になっている)になっていて雰囲気があります。
怪奇現象に悩まされる登場人物が、病んでいく作品のはしりだと思います。
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3つめは、「たたり」(1959年)です。
アメリカの女流作家シャーリイ・ジャクスン(1916年12月14日生、1985年8月8日没)の作品です。
この作品は2度映画化されていて、1つはロバート・ワイズ監督の「たたり」(1963年)、2度目はヤン・デ・ボン監督の「ホーンティング」(1999)です。
ワイズ監督の「たたり」はホラー映画の古典の1つとなっています。
この小説は、読んでいると頭がおかしくなりそうです。
主人公の女性が精神的に追いつめられて、おかしくなっていく姿が彼女の視点から描かれた作品です。
よくできた小説なのはわかるけれども、こうしたものばかり書いて、読んでたら、おかしくなりそうで怖いです。
4つめにして、現代恐怖小説(モダンホラー)界のスーパースター、スティーヴン・キングの登場です。
紹介する作品は、「ミザリー」(1987年)です。
イカれている元看護師が、事故にあったベストセラー作家を発見、彼を自宅に監禁して、自分の思うように作品を描かせます。
彼女は作家が出て行ってしまわないように、その足を折ったりしてしまいます。
僕は、キングは、「シャイニング」や「IT」も読んだし、一時期は彼の手に入る本は、すべて読んでいましたけれども、いま、こうして思い出して、筋をしっかり覚えている作品は、この「ミザリー」なので、今回、選んだのは「ミザリー」です。
この作品は、シンプルなストーリー、少ない登場人物で、非常にわかりやすい作品です。
ある意味、誰でも楽しめる、というか。
映画版もしっかり作ってあるので、どなたにもオススメです。
こうした大がかりでないシンプルな作品でも、読者をしっかり楽しませられるところが、キングのすごいところだと思います。
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5つめはH.P.ラヴクラフトです。ハワード・フィリップス・ラヴクラフトは米国人の作家さんです。
この人は、どれか一作というよりも、著作をまとめて「クトゥルフ神話」の父になった人です。
あえて1作選ぶとしてら、「インスマウスの影」ですね。
これも、怪物ものモダンホラーの古典です。
ラヴクラフトといえば日本では恐怖の大御所、ホラーの殿堂みたいなイメージがありますが、僕がこの人に持っているイメージは、不遇な人生を送った異能の人です。
僕がラヴクラフトをちゃんと読んだのは、上に貼った東京創元社版ではなくて、僕が通っていた大学の図書館に、国書刊行会版の上製本のラヴクラフト全集がなぜか、全巻あって、僕は、なんじゃ、こりゃ、という感じでそれを一巻から、コツコツ読んでいったのでした。
その全集は、彼が作家になる以前の習作から収録されていました。
洞窟にひそむ猿人みたいな怪物と戦う話とか、読んだ記憶があります。
日本でラヴクラフトがホラーキングみたいに言われるのは、彼の小説「クトゥルフの呼び声」(1928年)がもととなって、彼と縁故のある作家たち、ファンたちがつくりあげたいわゆる「クトゥルフ神話」というものが、日本ではひどく有名になっているからだと思います。
僕なりに短くまとめると、世界には、遠い遠い過去にこの世界にいた古き神々的な化け物たちが、いまもどこかで生息していて、それらは、普通の人間は眼にしただけで発狂してしまうような狂気に満ちた存在である。
しかし、人間たちの中には、それらの神々を崇拝し、古き神々が再びこの世界を支配するのを望んでいる者たちもいるのであった。
ざっくり書くと、以上のようなバックホーンをもとに、また、ラヴクラフトが遺した小説をパーツ的に使用して、延々と古き神々(旧支配者とも呼んだりする)と人間たちの関わりを描くのが、「クトゥルフ神話」と呼ばれているものです。
有名なギミックとしては、魔導書「ネクロノミコン」やその著者で狂えるアラブ人アブドル・アルハズラット。
ティンダロスの猟犬。
アーカムハウス(ラヴクラフトの作品を出版した実在の出版社)
読書、サブカル好きなみなさんは、本に限らず、マンガ、アニメ、映画の中で、どれかは耳にしたことがあるかと思います。
僕の個人的な意見としては、ラヴクラフトは、それこそM・R・ジェイムズあたりからの流れをくむ古典的な怪奇、恐怖作家で、その作品もオーソドックスな流れをベースに、自分なりの新味を加えていったものでした。
それが周囲にいる作家、編集者、読者たちと盛り上がってクトゥルフ神話となってしまっただけで、そもそも、本人の孤独な魂をいやすために怪奇小説を創作していたラヴクラフトが、「這いよれ! ニャル子さん」に喜ぶとは僕にはあまり思えません。
日本のライトノベル「這いよれ! ニャル子さん」は、作者によるとラブコメ=ラブクラフトコメディだそうです。これが売れる国だから、日本のオタクさんはすごいと思います。
最後にラヴクラフト関係の動画を5つあげておきます。
ラヴクラフトの作品にふれたことのない方、なぜ、この人がある種の教祖となっているのか気になる方、ただただ懐かしい方、楽しんでいただければ、幸いです。
では、長くなりましたので、ここまでの5作の紹介で1度、記事を終わります。
僕が読んできた恐怖小説ベスト10 下 は、またの機会に。
失礼します。