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VOL.4.49 「ホワット・ライズ・ビニース」世界と日本であまりにも評価が違う作品。

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 画像出展元URL:http://eiga.com

日本公開初日に妻と観に行きました。なぜか人に言いにくい過去です。

2000年12月9日に愛知県、豊橋市の日本最大数の18スクリーンを誇るAMCホリデイ・スクエア18(現、ユナイテッド・シネマ豊橋18)で観ました。初日でしたが、そのスクリーンの客は僕と妻の2人だけだったと思います。

当時はAMC18は、夜の最終回と朝の1回目はいつでも誰でも1000円で観られたので、僕らは最終回に行ったのです。(ちなみに2020年現在は、1100円です)

事前にキネ旬(ジネマ旬報)で情報を調べて、米国での大ヒットを知っていたので、妻に、「これ、アメリカですごいウケてるらしいよ!!」とかなんとか吹き込んで連れてきた手前、劇場内の閑散としたありさまと、映画の内容の微妙さに、すごく申しわけない気持ちになったのをおぼえています。

「 バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズを完結させ、「フォレスト・ガンプ/一期一会」でアカデミー作品、監督賞を受賞したロバート・リー・ゼメキス監督とハン・ソロ、インディ・ジョーンズ、ジャック・ライアンのハリソン・フォードの全米大ヒット作が、なぜ、日本では観客にそっぽをむかれてしまったのか?

この映画を観た当時、僕の頭の中は、その疑問でいっぱいになりました。

「ようするに映画がつまらなかったから、日本ではウケなかったんだよ」

と言うのはまぁ正論だとは思いますが、しかし、果たしてそんなにそんなにつまらないだろうか?

この謎は僕の心に残り続けました。

 

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夫婦役のハリソン・フォードと ミシェル・マリー・ファイファー。

 

2人は、思いもよらない恐怖を味会うことになります。

こう書くと、ホラー映画なの? と思われるかもしれませんが、宣伝文句によれば、「アルフレッド・ヒッチコックの映画技法を意識したサスペンス・スリラー作品」だそうですが、まずこの時点で僕が思うのは、サスペンス・スリラーでも、ヒッチ・コックの作品ではどこかにあったユーモア(必ずヒッチ自身がカメオ出演してる等)が、残念ながらこの映画にはないということです。

ほんの一コマでもユーモアを入れるだけで、サスペンス・スリラー映画は内容的にふくらみ、作品が豊かになります。

この映画自体は、ゼメキス監督がインタビュー等で言うように「ヒッチコックが最新技術(2000年当時の)を使ったら、撮るような映画を撮りたかった」というこころざしを十分に感じさせるものにはなっているとはいえ、それはあくまで映像の魔術師と呼ばれるゼメキス監督の視点から見たもので、あくまで撮影技術、視覚効果の点での、20世紀末に制作されたヒッチ作品であって、日本の多くの観客はそうした視点でのヒッチ作品のアップグレード版は求めてはいませんでした。

この映画の公開当時、日本では、もっとわかりやすいド派手な(マトリックスのような)VFXやそれまでの定番を外しまくったストーリー(ツインピークスや劇場第一作めまでの踊る大捜査線のような)などのわかりやすい目新しいものがウケていました。音楽だと小室哲哉とかね。

本作は日本では主にストーリー面の目新しさのなさがあげつらわれ、

火サスや土曜ワイド劇場(どちらも当時、毎週放送されていた地上波TV局の2時間低予算サスペンスドラマの帯番組)をハリウッドがやってどうする!!

とか評されて、僕も言われてみれば、それもそうかな、と思いました。

考えてみれば、2020年の現在よりも、2000年当時は日本では、シナリオにあまり工夫のないサスペンス・スリラー番組がTVにあふれていた気がします。

とにかく出演作品数が多いことから2時間ドラマの女王と呼ばれた片平なぎさや同帝王と呼ばれた船越英一郎が、それゆえに広く認知されていた時代です。

パターンとしては、ちょっとしたミステリ小説を原作に、とにかく低予算で2時間ドラマにする、というのが当時のTV局、各局のやり方でした。

ハリソン・フォードと ミシェル・マリー・ファイファーでそれらと大差ないお話でやってどうするの? というのが多くの日本人が「ホワット・ライズ・ビニース」に抱いた感想だったようです。

まとめると、シナリオ面で当時、多産されていたそういうタイプの作品には目が肥えていた日本の観客は、「ホワット・ライズ・ビニース」にはなんの衝撃も受けなかったとなりますね。

僕も当時を生きていた日本人の一人なので、その意見はわかります。(しかし、日本での低評価は残念だ。細かな点ばかりだけど、各場面やBGM、役名、ハリソンは「ノーマン・スペンサー」までヒッチのオマージュだからけなのに)*ノーマンはヒッチのホラー映画「サイコ」の殺人鬼ノーマン・ベイツからですよね。

それでも気になる人のために「ホワット・ライズ・ビニース」のお話

 まず先に、念を押しますが、この映画の監督は「 バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズや「フォレスト・ガンプ/一期一会」のロバート・リー・ゼメキスです。ですから、落ち着いて物語に入り込みやすいタッチで映画は描かれていきます。

ノーマンとクレアの夫妻は、ノーマンの父親が残した湖畔の邸宅に引っ越してきました。

映画のファーストシーンはバスタブに浸っているクレアです。

娘のケイトリンが大学進学&入寮のために家を離れ、2人は夫婦のみで暮らし始めるのですが、隣家の夫婦の争いや夜の営みの大嬌声、さらには、TVやラジオが一人でに動き出したり、浴室の鏡に女性の姿が映っていたりと、仕事で不在がちのノーマンは気にしませんが、一人で家にいるクレアは神経症になってしまうくらいに追い詰められていきます。

実は、怪事にはすべて理由があり、その秘密は、家の目の前の湖の底に潜んでいたです。

<ミステリ系映画のお楽しみとして「ホワット・ライズ・ビニース」の真相については、この記事では明かしておりません> 

 

濃い映画ファンならみんな知ってるだろうお話

関係あるようなないようなマクガフィンの話。

サスペンス映画好きやヒッチの映画が好きな人は耳のしたことがあるであろう、マクガフィンという言葉ですが、これはそもそも、ヒッチの著書、「映画術」で具体的に説明されている作劇用語です。

ヒッチいわくマクガフィンとは別になんでもよくて、物語を進めるうえで鍵となるようななにか、だそうです。(確か)

例えば、「北北西に進路をとれ」の中の、事件の鍵を握りながら、実は実在しない人物、ジョージ・キャプランとか、「サイコ」のノーマンの母親とか、そういうものです

「ホワット・ライズ・ビニース」だとそれは、マディソンだと思います。彼女が謎の根源であり、物語の鍵であるマクガフィンですね。

 

 僕が小学生の頃、ヒッチコック監督の映画が、映画館でリバイバル上映されて、その後もしばらくはTVの映画劇場やNHKで、ヒッチの映画が放送されて、彼の作品のおもしろさにふれることができました。

そして大学生の頃に本屋に並んでいたこの本を高かったけど(税込3300円)買いました。

サスペンス・スリラー映画の神様と呼ばれたヒッチがトリュフォー相手に語る映画術を読むと、映画がさらに楽しめるようになった気がします。

  

 動画がないとさみしいので、ライムスターのヒッチ映画リスペクトの曲「マクガフィン」を貼っときますね。


岡村靖幸さらにライムスター「マクガフィン」

 

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