すごさの意味がわかるまで32年かかりました。「アンタッチャブル」(1987)
1987年に日本で劇場公開されたブライアン・デ・パルマ監督の「アンタチャブル」ですが、88年のアカデミー賞でベテラン警官役のショーン・コネリーが助演男優賞を受賞しています。
映画はアメリカ、日本共にヒットして話題になりました。
1920年代から30年代初期の禁酒法に闇酒場を横行させ、絶大な権力を誇っていた犯罪組織のボス、アル・カポネとカポネの暴力に屈せず、多大の犠牲を払いながらも、彼を刑務所へ送り込んだ連邦捜査官エリオット・ネスらの戦いを描いた日本風に言えば刑事ドラマです。
この映画は史実をもとにして、これ以前にTVドラマ版も存在していました。
87年の日本公開当時、話題になっていたし、当時高校生だった僕も話題につられて劇場に足を運びましたが、当時は、どうもしっくりこない。
主人公は清潔感あふれるハンサム(30代前半のケビン・コスナー)で、映画はどこもキレイにできてて、そこそこドラマチックでお約束通りで、音楽もカッコよくて、勧善懲悪のハリウッド映画。
高校生の僕としては、それが制作会社のもくろみ通り、日米でヒットしているのが、つまらなかったのだと思います。
で、ですね、本日。令和元年の5/2、約32年ふりにこの作品を観たのですが、そしたら、これが、すごくおもしろかった。
監督のブライアン・デ・パルマがサスペンスの職人監督の定評にふさわしい、手堅い演出をして、サスペンスフルでドラマチックなタッチで観る者をあきさせない。
音楽も映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネが、ばっちり仕事をしてくれている。
俳優陣もアル・カポネ役のロバート・デ・ニーロはもちろん、その名に恥じない演技を見せてくれているし、主役のケビン・コスナーも正義の男を熱演していて、本作でアカデミー賞を受賞したショーン・コネリーは、僕は、もしかしてこれが彼の映画での生涯ベストかも? と思いました。
その道のプロがそれぞれのもち場でなすべきことをこなしたプロフェッショなサスペンス刑事ドラマ。
銃撃戦も追跡も法廷劇も熱いよ。
教科書嫌いの高校生だった僕が、直視してそのよさを認めることのできなかったわけです。
こういうのをちゃんと観るのがまぶしい(キツイ)ひねくれた青春を送ってました。
しかし、どんなに準備したつもりでも、定石通りにすべてがうまく行くことなんて、実はありそうでないことですよね。
この映画では、勧善懲悪のシナリオでそれが行われています。
ある意味、奇跡である。
そりゃ、名作として歴史に名を残すでしょう。
プロが制作した最上の刑事ドラマを119分、楽しみたい方へ、オススメします。
少なくとも、「相棒」の再放送を観て時間をつぶすより有意義だと思いますよ。
5点満点中4.8点(残念ながら、できすぎの優等生臭がするので-0.2)