製造人間は頭が固い 上遠野浩平 ハヤカワ文庫JA①
僕と上遠野浩平作品とのなれそめ等々
僕と上遠野浩平作品との付き合いは長い。
1988年に第4回電撃ゲーム小説大賞受賞した「ブギーポップは笑わない」が出版されて以来、ずっと読んでいるので、約30年の付き合いになる。
「ブギーポップは笑わない」は、本屋でまるまる一冊立ち読みして、その後に購入した。
上遠野作品で一番多くふれたのは、やはり、世界の敵の前に自動的に登場する死神ブギーポップ、シリーズで、映画もアニメもみたし、数種類ある漫画もすべて読んだ。
こうしてずっと読んでいるからには、かなりの大ファンなのだろう、と思われるかもしれないが、自分ではそれほどでもない、と考えている。
なぜなら、上遠野作品は、ブギーポップシリーズを軸にしてほとんどの作品がつながっていて、結果的に上遠野作品すべてを通して、人類統和機構興亡記とでもいうべき大河物語になっているのだ。
上遠野作品を読み続けている僕などは、つまり人類統和機構の物語を追い続けているのであり、おそらく人類統和機構の物語に決着がつくまでは、僕は上遠野作品を読むのを辞めないと思う。
おもしろさや作品の質どうのよりも、単純に、読みかけの長い長い小説を途中で辞めたくないのだ。
人類統和機構とは、最初は、上遠野浩平のデビュー作「ブギーポップは笑わない」に登場した、いわゆる世界を影から操る秘密組織である。
もちろん、悪の科学者や独自に製造した戦闘用合成人間(怪人)も擁している、仮面ライダーのショッカーをもっとスマートにしたみたいな組織だ。
上遠野浩平の小説には、この人類統和機構が手を替え品を替えて何回も登場する。
世界的な巨大秘密組織なので、たくさんの人間が属しており物語のタネはつきない。
上遠野浩平には2017年現在60冊以上の著作があるが、それらのほとんどの物語世界に人類統和機構は関係している。
物語それぞれの枠も、出版社の違いも関係なく、人類統和機構は描かれているのだ。
以上の点からみると、上遠野浩平のユニークさがわかっていただけると思う。
結局、僕は、約30年かけて人類統和機構の物語を読み続けているのにすぎない。
話は逸れるかもしれないが、以前、雑誌のインタビューで上遠野浩平が、ライトノベルのレッテルの下に作家が閉じ込められてしまう、作品が不当に低く評価されてしまうような現象があるのではないか? みたいなことを言っているのを読んだ気がする。
だいぶ前の話で、はっきりとおぼえていなくて申し訳ないです。
ただ、その時、僕は、この人は小説に対して、すごく真剣なのだなぁ、と感心した。
この人の小説は読む価値がある、と、そう思った。
ラノベの枠と関係なく、読む価値のある小説を書く、という志を感じたとでも言おうか。
実際、上遠野浩平の作品は、いつも気概に溢れている。