実話怪談に救われた日
こんばんは。
今日は、私が実話怪談に救われた気持ちになった日のことをお話ししたいと思います。
みなさんの中にある、実話怪談のイメージはどんなものでしょうか?
大好きな人。
いやいやうさんくさいよね、とい言う方。人それぞれだと思います。
私の場合、実話怪談は小学生の頃から好きでした。
読む怪談は、怖いけれども、でも、読んでいると夢中になって、同じ本を何度、読んでも飽きない。
不思議な読み物でした。
それが本当にあったできごとかどうかは、私にとっては重要ではありませんでした。
だって、それが事実かどうかなんて誰にも証明できないだろうと、思うから。
体験した人は、あったとしか言えないし、信じない人は絶対に信じない。
それがいわゆる心霊現象です。
私はそれでもそれに心惹かれる少年でした。
なぜならそれが不思議だからです。
ですけれども、年を取るにつれてそれは人前では話せない趣味になっていきました。
へたに話すと信用を失いかねない。
怪談話を聞いて、急に不愉快になったり、そういうバカみたいなことは言わないでくれと怒る人もいます。
怪談なんて、やっぱり子供っぽい趣味なのかな? 人には言えない楽しみなのか。そう思ったりもしました。
稲川順二のビデオをレンタルしたり、CDを買ったり、怪談LIVEへ行くのは、人に知られてはいけない趣味なんだ。
一時期、私は、怪談が好きなのを人に話すのをやめました。
SM愛好家の人もこんなふうに、自分の趣味嗜好を人に話せないんだろうか。なんて思いました。
悪いことはなにもしてないのにね。
大人になってずいぶん経った頃、私は知り合いの家へ遊びに行って、たまたまその人に寄贈されていた新耳袋の1、2巻を見つけました。その人は作家さんで、出版社から送られた本で、自分が読まない本を私にくれたりすのです。
「先輩。これ、おもしろそうなんで、持って帰っていいですか」
「いまのところ読む予定ないから、いいよ」
先輩に頂いた新耳袋に私は夢中になりました。
これは私が望んでいた本だ。
編者たちが取材して集めた実話怪談が各巻99話ずつ。
どの話も本物感にあふれていて、演出抜きな感じでした。
どうこか高級な感じで、それまでの怪談本にはこういうものはありませんでした。
私は何回も何回も新耳袋の1,2巻を読み返しました。
それから数年後、私がメディアファクトリー社の「実話怪談コンテスト」という文芸賞に応募したのは、やはりそこが新耳袋の出版社で、怪談専門誌「幽」の編集部が主催していたからです。
自分の好きを形にしてもいいのだと喜びました。
私の応募作は、最終選考に残りました。
編集部からメールをもらい、編集者さんと電話で話した時、震えました。
怪談を好きで、信じていてよかった、と思いました。
結局、私の怪談は賞を取ることはできず、本にもなりませんでした。
でも、私が書いた怪談が他の人にも読んでもらえて、評価される、というのは、とて励みになりました。
当時、あの賞の最終選考に残った勢いもあってか、文を書く仕事に就くことができ、お金を頂くこともできました。
それから、ずっと、あれこれあって特に怪談を書こう、と思ったこともなかったのですが、いまこうして脳出血のリハビリとして始めたブログで、怪談を書き、それを読んでくださる方たちにめぐりあえて、ああ、やはり私は怪談に救われる人生なのだな、と勝手に感じています。
こういってはなんですが、一度死んで、生き返ってきて、また怪談を書いているのだから、どうやら、私には怪談がついているらしい。
なら、この場を借りて、書けるだけ書いてやれ、と思っています。
これまで何回か書いたように、私はいわゆる霊能力者ではありません。
興味本位でいろいろな話を聞くのは好きですが、有名な心霊スポットへわざわざいったりもしません。
人から言われる私の特徴は、あんた自体はこれといった特徴はないんだけど、不思議な人、出来事があんたの側に寄ってきて、あんたはそれを側でほぅっと見てる、あんたの側にくると、その人の隠された力が開花したりして、あんたはそれに巻き込まれてる、だそうです。
不思議も怪異も、こちらが普通にしていれば、起きるべき時には勝手に起こります。
私はそう思います。
それは運命なのかもしれません。会うべき人は自然と会うのが怪現象です。
心構えとしては、どこでなにがあっても、ある意味、不思議だと思わないことです。
ビルの高層階の窓に、両肘、膝下が切断された女の人が貼りついていて、こちらを眺めていても、もし、あなたにそれが見えたのなら、それはそこにいるのだから、ありのままに受け止めればいいと思います。
例えそういうものがいたとしても、実際にそれを見つけて気づいている人は、そんなにいません。
私は、時たまそういったものを見るのですけれども、ただ、それだけです。
じっと眺めていると消えて見えなくなったりします。中にはずっと見えてるのもあります。
地方都市の深夜のビル街を竹馬に乗ったワンピースの大女が歩いているを見たことがあります。一緒に車に乗って、深夜のドライブをしていた友達は、私の横で、「おお。すげぇ」と言っていました。あれがなんだったのか、私にはわかりません。
不思議はおかし、楽しいです。
頭のおかしいおじさんかもしれませんが、またよろしくお願いしますね。