映画「ローン・レンジャー」(2013)のあらすじとネタバレ感想 47歳オタクでも楽しめるエンタメ。しかし、ややマニアックか。
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ローン・レンジャーの評価
☆☆☆☆★
2013年のサマーシーズンに公開され、全世界で予想をはるかに下回る成績を残し(製作費2億1500-5000万ドルで、推定1億2000万ドルの赤字。つまり約120億円の損失ですね)、作品自体の評価としても最低映画に送られる映画賞で有名なゴールデンラズベリー賞(通称ラジー賞)で、最低作品賞、最低男優賞、最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞、最低監督賞、最低脚本賞の5部門にノミネートされ、最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞を受賞しました。
これらの成績については、ローン・レンジャーが米国では、1933~54年の間21年間(全2956話)も放送されていた人気ラジオドラマであり、テレビ版も1949~58年(全221話)に放送され、すでに1956年、1958年、1981年に計3回映画化もされています。
マンガ(アメリカン・コミック)版も存在する歴史と知名度のある米国の国民的ヒーロ1人のため、今回の映画化に対しても期待値が高かったことの裏返しである面も強いと思います。
ローン・レンジャーという企画自体が、いかに伝説的な作品といえども、2013年の作品としては古くなりすぎていたのでしょう。
個人的にこの映画に☆4つの高評価をつけたのは、2018年の現在、47歳の映画ファンの日本人としてこの映画を見て、僕個人としては、1本のエンタメ映画として平均よりもやや上の娯楽を提供してもらったと感じたからです。
やはりお金がかかっているだけあって、セットもアクションもいろいろ豪華です。
全編を通してなにもかもが西部劇の良質なパロディだと思いました。
僕は、ラジオやテレビ、コミックなどの過去のローン・レンジャーへの思い入れがまったくないので、本作をフラットに楽しめたのではないかと思います。
日本での興行成績は米国で大赤字との評判の影響をたぶんに受けているのではないでしょうか。
米国で赤字でも、作品自体の出来とはあんまり関係ないじゃんと僕は思います。
深く考えずに2時間半ぼーっと眺めていれば、普通に楽しませてくれます。
見どころはネタバレ感想の項目をご覧ください。
ローン・レンジャーのあらすじ
主人公は原則、直接手を下さない
1933年サンフランシスコの移動遊園地に遊びにきた少年ウィルは、ワイルド・ウェスト展のテントへ足を運びます。
テント内には、バッファローの剥製などがありました。
ウィルはそこで、インディアンの蝋人形に目をとめました。
ウィルが眺めているうちにその人形はまるで生きているように動きだし、自分は「トント」だと自己紹介します。
トントとはローン・レンジャーの相棒のインディアンの名前です。
ウィルは、1933年当時、すでにラジオドラマが放送されていたローン・レンジャーのファンで、遊園地にもマントにマスクのコスプレをして遊びにきていました。
年老いたトントは、ローン・レンジャーこと元検事ジョン・リードとの冒険の日々を語り始めます。
トントとローン・レンジャーは2人で銀行を襲いました。しかし、この話を聞いたウィルは、ローン・レンジャーはそんなことはしないと、話を信じようとしません。
トントの話は、銀行強盗以前の2人の話に戻ります。
1869年、ジョン・リードとトントは列車の中で出会います。
たまたま2人が乗っていた西部へむかう列車には、死刑囚のブッチ・キャヴェンディッシュも乗せられていました。
列車はブッチの奪還せんとする彼の仲間のならずもの達に襲撃され、列車は脱線、ブッチには逃げられてしまいます。
ジョンにはブッチを打ち殺すチャンスはあったのですが、銃よりも法を選ぶジョンは引き金を引けませんでした。
なにもかも失ってもトントは残った
街までたどりついたジョンは街のレンジャーをしている兄のダンとその仲間たちと一緒にブッチを探しに行きます。
しかし、そこで仲間の裏切りに遭い、ブッチ一味に狙撃、襲撃され、ダンと他の仲間たちは全員死亡し、ジョンも意識を失います。
ダンに留置所に入れらていたトントはそこから抜け出し、ダン達を追ってきていました。
そして殺された7人を埋葬して、1人だけ命をとりとめたジョンをスピリット・ウォーカー(戦いで死なない勇者)として治療しました。
「友(キモサベ)よ。マスクをつけるのだ。復讐のために」
兄のダンが最後に着ていた二発の銃弾の穴のあいた黒い革のベストでアイマスクを作り、死んだレンジャーたちのバッジを溶かして作った銀の銃弾を持ち、峡谷からダンたちをつけてきた白馬に乗って、ジョンはローン・レンジャーになりました。
ジョンとトントは、ブッチ一味を探して、町にある「レッドの店」という売春宿にたどりつきました。
そこには仕込み銃入りの象牙の義足をつけた女主人レッドがいました。
彼女はかってブッチに片足を食べられたのだそうです。
ここ最近、襲撃を受けたとかでインディアン、コマンチ族に恨みを持つ白人たちが店に乗り込んできて、ジョンとトントは町から逃げ出します。
そして、ダンの妻レベッカと息子のダニーが暮らす町はずれの家へとむかいます。
しかし、2人が着いた時には家はすでに襲われていて、母子の姿はありませんでした。
2人は家にいた襲撃者たちを撃退します。
家を襲撃していたのはコマンチ族ではなく、コマンチ族を装ったブッチの仲間たちでした。彼らはコマンチ族のフリをして白人を襲い、コマンチと白人の和平を壊そうと企んでいたのです。
レベッカとダニーはブッチ一味にさらわれ、囚人にされていましたが、なぜかにそこにあらわれた謎の男(逆光で顔がよく見えませんが、後のストーリーからするとおそらくレイサム・コールの部下でしょう)によって救いだされます。
一方レベッカ母子を探して荒野で迷子になったジョンとトントは、コマンチ族の矢に撃たれ、ジョンは意識を失い、2人はコマンチ族の集落の囚人になったのでした。
復讐は正義か?
コマンチ族の集落で意識を取り戻したジョンは長老から、トントが幼き頃、騙されて安物の銀時計と交換に銀山のありかを白人たちに教え、そのせいで当時トントがいた集落が全滅されたことを教えられます。
そんな事件があってからトントは、カラスの剥製を頭にのせ、その時の白人たちを悪霊と呼び、追い求めるようになったのでした。
コマンチ族の信用を得られないまま、ジョンとトントは生き埋めにされてしまいます。
2人の首にサソリが群がってきてまさに危機一髪のその時、2人についてきていた白馬がサソリを食べてくれて、ピンチを脱します。
2人はブッチが現在、銀山も狙っていると考えて、かってトントが白人を案内した銀山へ向かいます。
そこではブッチたちが数100人の中国人を奴隷のように使って銀を採掘していました。
2人はダイナマイトを爆発させて銀山を大混乱に陥らせました。
ブッチを捕えて法の裁きを受けさせようと、ジョンとその場で殺そうとするトントで意見は対立し、ジョンはトントをスコップで叩いて気絶させ、ブッチを連れてその場を去ります。
それでも殺せない正義の行方
町へ戻ったジョンはそこで町の指導者的人物であるレイサム・コールが、実はブッチの兄であり、かってはブッチと一緒に幼いトントを騙してインディアンの集落を壊滅させ、現在でも一見良心的指導者を装いながらも、汚い仕事は裏で弟のブッチらに行わせ、鉄道会社を掌握し、採掘した銀で巨額の富を手に入れようとしているのに気づきます。
コールは当然、ブッチを処刑はせず、解放します。
ジョンはコールの正体を軍の指揮官ジェイ・フラーに告げますが、ジェイはホールに言いくるめられてしまい、ジョンは捕えられ、処刑されることになります。
鉱山の処刑場でジョンの死刑が執行されようとしたその時、トントが現れ、ジョンを救出しました。同時にコマンチ族の襲撃と軍との攻防があり、その場は数100人の命が失われる大惨劇となりました。
ジョンとトントを殺すためにブッチが放ったダイナマイトの爆発を地下湖に潜って逃れたジョンたちは、いったん、この場から姿を消します。
暴走する列車。脱線。爆発。悪は滅んでゆく。
大陸横断鉄道開通の日、鉄道会社の社長以下の重役が集まった場で、コールは皆の前についに自分の正体を現します。
鉱山で手に入れた億千万トンの銀をこの鉄道で都へ運んで換金して、自分はこの鉄道会社を買収し、その巨額な富で世界を支配する、と。
ここでまず、トントが銀の積まれた列車を奪い、発車させます。
さらに売春宿の女主人レッドが、騎兵たちの待機させていた馬をすべて解き放って、列車を追えないようにします。
残された列車でトントを追うコールたち。
コールたちの列車の上には、愛馬の白い馬(シルバー)にまたがったローン・レンジャー(ジョン)が現れます。
二台の列車が暴走する中でジョンはレベッカを取り戻し、2人はシルバーにまたがったまま、抱き合い、キスを交わします。
そして、ブッチとジェイは列車同士が粉々に大破する激突に巻き込まれ、物語から消えます。
最後に残った悪役コールは、トントの目の前で、大量の銀と共に列車ごと川に墜落していきました。その橋はあらかじめ、ジョンとトントが爆破しておいたのです。
かくして悪は滅び、ローン・レンジャーとトントも愛する人を残して町を去っていきました。
映画のラスト、舞台は再び1933年の移動遊園地へ戻ります。
かっての自分の冒険譚をウィルに語り終えたトントは、ウィルに銀の弾丸を渡し、書割の荒野へと消えていきます。
ウィルに話をしたトントが幻なのか、幽霊だったのかは誰にもわかりません。
エンドロールでトントがひたすら荒野を歩き去っていくところで映画は終わります。
ローン・レンジャーのネタバレ・感想
本作最大の悪役は
本記事のあらすじを読まれた方はもうご存知かと思いますが、この映画の黒幕は、レイサム・コールです。彼はならず者ブッチ・キャヴェンディッシュの兄であり、この兄弟はトントが幼い頃、彼の村を滅ぼした悪党でもあります。
この映画のおそらく一番の秘密は、レイサム・コールがブッチ・キャヴェンディッシュの兄であることで、現在は鉄道会社の紳士として西部の発展に尽力している正義の人を装いながらも、その実態は私利私欲のためならいかなる犠牲もいとわない、傲慢な犯罪者です。
作中ではもちろん、この兄弟は最終的にはローン・レンジャー&トントの活躍により倒されるのですが、一応、死亡したと思われるものの、どちらもはっきりと死亡を確認できるシーンはありません。
もしもローン・レンジャー2が制作されていたら、悪役とし再登場していた可能性はたぶんにあります。
どうせならタイトルをビックサンダーマウンテン<ローン・レンジャー>にして
ディズニーランドのアトラクション、カリブの海賊を原作? にした映画パイレーツ・オブ・カリビアンが大ヒットしたので、その制作、監督、キャストで作られたローン・レンジャーですが、どうせやるのなら、いっそ、再びディズニーのアトラクション、ビックサンダーマウンテンを原作、映画タイトル(ローン・レンジャーは副題)にして、興行を打った方が集客できたのではないかと思います。
往年のヒーローものを復活させるよりも、現在ではディズニーのアトラクションの映画化の方が集客力があると思いませんか?
ヒロインが子持ちでしかも兄のヨメではちょっと
僕以外の多くの方がネットでこの映画の感想として悪い点をたくさんあげておられるので、僕からは悪い点の指摘は少なめにしておきますね。
で、僕が一番、気になったのはこの映画のヒロイン、レベッカです。
レベッカは、ローン・レンジャーことジョンの初恋の人で、しかもジョンの兄であるダンのヨメ、しかも現在は子持ちです。
兄のダンは作中で亡くなっているとはいえ、しかししかし、ようするに義理の姉さんとの熱い抱擁とキスは、多くの観客の共感は得られないのではないでしょうか?
兄さんはたしかに死んでますけど、まだ死んでから間もないし、レベッカにいたっては夫の死を知ってからほんのわずかしか経っていないのに、映画の後半には義弟への恋愛感情むきだしです。
どうなんでしょう?
僕はこの映画でここに一番、引きました。←ハイよ~シルバー!!よりも引いたぞ。by.honkidehon
結局、制作陣にとってはしょせんはアクションコメディなので、キャラの心情なんて二の次、三の次なんだな、と思いましたね。
映画史に残るラスト30分はウソではないかもしれないが
僕としては、この映画を宣伝、紹介する時に多用された映画史に残るラスト30分という言い回しをできればやめていただきたいです。
たしかにラスト30分はおもしろいアクションシーンの連続です。
しかしこれ、映画史に残るかどうかは正直、疑問です。
この映画に関しては、僕は多くの人が書いている、どうしようもないくらいつまらないという評価も言いすぎだと思うし、同時にラスト30分に関してはみなさん、誉めすぎだと思います。
平均してみればそこそこおもしろい作品だけど、「企画自体が時期をはずしすぎていて、期待されたほどヒットしなかった」というのが実像に近い評価なのではないでしょうか?
ローン・レンジャーの最後に
結局、映画の感想は個人によって千差万別なので、上映時間150分は長すぎる!! 冒頭とラストのアクションはいいにしても中盤が退屈!! とネット等で悪く書かれている記事が多い本作ですが、僕個人は楽しめましたし、見ていない人には、現代風の勧善懲悪の西部劇として見て損はないよ、とオススメしたい作品です。
世界的に興業が不振だったと言われても、それこそ大ヒットしなかった映画でも個人的におもしろい映画は誰にでもあると思うし、そういう映画を持っていない人は、映画ファンとしては少しさみしいですよね。
事実として、ローン・レンジャーは大予算を投じて、大手映画会社(ディズニー)が大ヒットさせるつもりだったのに、残念ながらヒットしなかった映画ですが、一観客にとってはそんなことは関係ないので、フラットな気持ちでぜひご覧ください。
もちろんたしかに脚本にアラも多いですが、アクション中心に光るところもたくさんある作品です。
ハリウッド大メジャーの目玉作品は、公開時は世界的大産業の顔になるだけに、当たらないと超駄作のように叩かれてかわいそうです。
記録的なヒットなんて、どんなに予算をかけても、商売上の計算通りに生まれるわけないじゃないですか、ねぇ。