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クラッシックの名曲のように、時代に合わせてアレンジされるミステリ「オリエント急行殺人事件」(2017)

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画像出典元URL:http://eiga.com

さて、「オリエント急行殺人事件」です。

令和になったので習慣的に毎日、ブログを書き、1日1本、なんらかの形で映画を観るようにこころがけているのですが、そうすると作品のチョイスは、基本、僕の手元にあるメディアですぐに観られるものに限られてくるんですね。

僕にとって映画は人生の教科書ですので、キリスト教徒が聖書を肌身離さないように、自分の心にとまっている映画を毎日、ランダムに見るのは楽しみであり、学びの時間だったりします。

 

ケネス・ブラナーが監督兼主演(ポアロ役)を務めた本作は、何度も劇化されてきたアガサ・クリスティのミステリ「オリエント急行の殺人」(1934)のいまのところの最新バージョンで、これが世界で大ヒットした(日本でもヒットした)ので、今後またクリスティのポアロものが映画化されることが決まったそうな。

それはまず、名探偵映画好きの僕としても、めでたい出来事で今後に大いに期待しております。

 

で、このオリエント、今回、見直してみて、あらためてよくできたお話だなと思いました。

 

*僕は大学時代、某有名作家さんを輩出したミステリ同好会に所属していたミステリ好きなので、ここ先のミステリの話は、かなりマニアックかもしれません。すみません*

 

今回の作品では、一応、冒頭でポアロの名探偵ぶりを紹介する小事件の解決パートがあり、そこで、ポアロが名探偵としてバリバリの現役で、世界各地から依頼を受けて飛び回っている姿が描写されます。

これ自体はあえてなくてもいいような気もするのですが、今回の映画の中のポアロは、いろいろと神がかっていすぎるので、ここで普通の名探偵ぶりを示しておかないと、なんというか事件と解決を引き寄せる超能力探偵ポアロのようになってしまうので、作品全体のミステリとしてのていを保つために、冒頭の寸劇は必要だったのかもしれません。

 

ここから先は、「オリエント急行殺人事件」のみもふたもないネタバレです。

この作品のキモは、犯人が誰か? どうやって殺したのか? ではないと僕は考えていますが、それでもやはりそこは知りたくないよ、という方は、今回はここまでにして、今後いつか、原作か映像版のどれかでオリエントをお楽しみください。

映像版はその人の生きている時代に合わせて、自分にとって一番なじみのある時代に制作されたバージョンを観られるとよいでしょう。

 

みなさん、御存じのようにオリエントの犯人は

 

被害者の大富豪以外の12人の乗客(&車掌)の全員

 

です。

 

ようするに過去に後ろ暗いところのある富豪が、自分に深い恨みを持つ連中の罠にまんまとはまり、彼らと共に豪華列車の中で一夜を過ごし、そして刺殺され、絶命する物語ですね。

もちろん、作中でそう自己紹介しているように「世界一の名探偵!! エルキュール・ポワロ」は、偶然、そこに居合わせたわけですが、今回の2017版のポワロは、もうね、被害者の死後、彼が残した脅迫状(犯人側から送られた殺してやるぞ的な文面)の燃え残りから、被害者が過去の大誘拐事件の犯人だとなんの伏線もなく即座!! に見抜き、そこからは、いもずる式に、列車の乗客が、みな誘拐事件の被害者家族(全員亡くなっている)と縁の濃いものだったと探り当て、そこまでくれば自然に、幼児を誘拐、殺害し、母親と胎児は流産でどちらも死亡、父親は自殺、事件にかかわった被害者側の多くのものが、破滅したり、自殺している中、犯人は逃亡し、名前をかえて、犯罪で得た巨額の金をもとでに、現在は実業家としてブイブイ言わせている。そして、彼と同じ列車に因縁のある12人が集まったとなれば、当然・・・・・・。

しかも12人はそれぞれ誘拐事件と深い関係のあった自らの素性を隠し、偽名を名乗ったりしているわけで、

 

大金持ちの幼女をさらい、殺し、一家(とあなたの生活)を破滅させたのに、なんの裁きも受けずに、事件で手にした身代金で資産家になり、別人として生活している男をあなたは許せますか?

 

オリエントは、この問題に、イエス、ノー、どちらを出すかを読者(観客)に問う作品なのです。

いわゆる神のごとき名探偵ポワロは、この真相の前に、どんな結論をだすのか? それが見所であり、実はミステリとしては、殺人事件の被害者である大富豪殺害計画を12人の犯人側から描いた倒叙推理(コロンボや古畑任三郎みたいな形式)で描いた方がおもしろい題材かもしれません。

完全に犯人サイドに寄れば、これって、ついでにポワロも殺してしまえば、すべてを闇に葬れる可能性が高いかもしれません。たしか原作も、そして今作も、ポアロ自身から犯人たちにそのプランも提案してみせたりします。

誰もが犯人&殺害方法を知っていても、クラッシックミステリとしていつまでも愛されているオリエントは、今後、まだまだ愛され続けるだろうと今回、確認できました。

なお、ミステリ通の方への伝言ですが、今作のポワロは走ったり、至近距離から銃で撃たれたり、はたまた生涯に一度の恋をした御夫人(なんだそりゃ?)の写真を大事に持ち歩いていたりと、いろいろこれまでにないアレンジがされていますので、すれっからしのミステリファンも、観たことのないポワロの一面が楽しめますよ。

114分のオリエント急行の旅、殺人事件がお好きな方へオススメします。(リアル殺人好きへのオススメではありません)

 

5点満点中4点(ミステリ、名探偵ものは、トリックや犯人当てがすべてではない!! と信じる気概にプラス1点です) 

 

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