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100-89 祖母には・・・(2)

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100-89 祖母には・・・(2)

誠が加藤から依頼された話の内容をまとめて整理すると、

80歳を過ぎた加藤の母親は、認知証もひどく、いまや過去の記憶もあいまいで、自分の家族と会っても、それが誰なのか、わからないような状態である。
そして彼女は若い頃から霊能力があり、いまも普通の人間には見えない存在が見えたり、声が聞こえたりしているようなのだ。
それらの彼女の霊能力に起因する言動を、入居している介護老人ホームの職員たちは、すべてが認知証が原因のものだと思っており、彼女の霊能力を把握していない。
誠のところに調査の依頼にいた加藤は、老婆の息子であり、また、加藤の娘、つまり入居中の老婆の孫である皐(さつき)は、その老婆が入居しているホームの事務所で事務員として働いている。
「娘の皐はあくまで、事務員として働いているだけで、入居者たちの直接の介護には、まったく関わっていません。
ですから、母は、認知もありますし、孫娘の皐が自分が入居している同じ建物で働いていることもわかっていないと思います」

「で、娘さんからそこで介護職の求人が出ていることを聞いて、あなたは、僕をそのホームに職員として潜入させようと思ったわけですね」
「娘は実際、母とは会っていないんですが、ですが、職場で母の所内での奇行の話を聞くことがあるそうで、それを私に教えてくれたのです」
「奇行、ですか。だって、お母さんは、霊能力者で、けど、それはホームの他の人たちには、理解されてないので、だから、お母さんの言動はすべて奇行として受け止められてるってことでしょう」
誠は少し悲しい気持ちで語った。
同じ霊能力者として、加藤の母の現状は、めぐまれていない状況だと思う。
「それがですね。母は最近、ホーム内にいる普通の人には見えないなにかに話しかけているようなんです。
そして、相手からの受け返しの言葉は、母以外の誰にも聞こえない。
それが母が意識のある間中、昼夜を問わず、場所も選ばず、四六時中、起こっているのだそうで、私は、鈴木さんに、母が誰となにを話しているのか、調べて欲しいんです。
そして、できることなら、母が終の棲家で静かにしていられるようにしてあげて欲しいんです」
「僕の力でお役に立てるかどうかわかりませんが」
誠が頭を下げると、加藤はありがとうと礼を言って、両手を握り、握手してきた。
翌日から、誠は問題の老婆のいるホームで介護職員として働き始めた。

 

END

今日はここまでです。続きはまた明日。

☆☆☆☆☆
 
89話めは以上です。
明日の100-90で今回のエピソードは終わる予定です。
こうした普通でない内容の依頼を受け、それにこたえるために働く、ということが、すごくたまにあったりしませんか?
普通に会社に勤めていても、社内の怪現象や怪事件の調査や解決をお願いされたり、それこそ、自分が住んでいる家の周囲やマンション内で奇妙な出来事があって、それを調べたりですね。
意外に不思議は日常の側によく転がっていると僕は思います。

読んでくださった方、ありがとうございます。

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