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100-70 探偵物語-3

100-70 探偵物語-3

 

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 Kの息子に連れられて所轄の警察署を訪れた誠は、これまでも何度か仕事がらみで世話になってきたせいか、想像以上に、刑事たちに好意的に迎えられた。

 

「Kさんの仕事を鈴木さんが引き継ぐのかい。

 それは心強いね。

 Kさんの件はこっちもずいぶん心残りがあるんだ。

 鈴木さんが真相を暴いてくれるなら、大歓迎だよ」

 

「どうも、すみません。

 お世話になります」

 

 誠は丁寧に頭を下げた。

 まずは、今日、自分のアパートのガラスを割られた件の被害届をだし、警察官たちに意見をきいた。

 

「Kさんの息子さんと一緒にいるところで、ガラスを割られたんなら、やっぱりそれはKさんが調べていた不良外国人がかかわってる可能性が強いな」

 

「その人たちは、この市内に住んでいるんですか?」

 

「ああ。だいたいそうだよ。

 市内在住でまともに働きもせずに、つるんで悪さばっかりしてる。

 悪い連中だ。

 ところで鈴木さん、ちょうどいいんで、あんたに相談したい件があるんだけどね」

 

 刑事は、机の上に市の地図をひろげ、ある建物のところに指を置いた。

 

 「ここ。知ってますか?」

 

 「さぁ」

 

 市の外れにある一軒家だ。

 誠には、おぼえはなかった。

 

「ここね。外人のやつらが、幽霊がでる、って噂してるんですよ。

 あのさっきいった悪い連中とは、また違う外人のグループなんだけど、そいつらがそこに深夜集まってたんで、パトロール中の巡査が尋問したら、ここは幽霊がでるとかどうとか言ってね。

 これ、持ち主がはっきりしない廃墟なんですけどね。

 私らとしても、一度、調べてみなきゃと思ってるところなんですよ。

 鈴木さんの方で、ここについての話、なにか聞いたことないですか?」

 

「すみません、僕、知らないですね。

 でも、このへんの外国人の間で話題になっている心霊スポットなら、Kさんが追っていた件となにか、つながりがあるかもしれません。

 僕も調べに行ってみます」

 

「いまは誰も住んでいないはずの空き家ですよ。

 行かれるなら、気をつけて」

 

 警官は、行けとも行くなとも言わなかった。

 Kの息子は、今日は1人で行くところがあるそうなので、誠は、警察署をでた後、1人で、その廃墟へむかった。

 市の外れの林の中にある、古びいた建物だ。

 木造で平屋建てで、倉庫かなにかみえる。

 誠はまず、建物の周辺をまわったが、草木が生い茂っているだけで、とくに怪しいものはなかった。

 建物の出入り口らしい扉には、大きな南京錠がかかっている。

 もしかして、ここの錠が外れてる、なんて偶然はないよな。

 誠は試しに、南京錠に手をのばし、錠が施錠されているか確かめようとした。

 すると、錠は鍵がかかっていなかった。

 その大きな南京錠は、あっさりと扉から外れてしまった。


 おいおい。

 これで、僕が中へ入って不法侵入罪で逮捕とかないよな。


「すみませーん、

 どなたか、いらっしゃいますかぁー?」

 

 誠は、扉を開け、中に声をかけたが、反応はなかった。

 

 なら、これはKさんの導きだと考えてっ、と。

 

 誠は扉から建物内部へと足を踏み入れた。

 林の中にあるせいもあって、昼間だが、室内は暗かった。

 埃っぽい室内には、ところ狭しとダンボールが置かれていた。

 どうやらここは誰かの創庫だったらしい。

 
 ん?


 誠は、埃に埋もれた床のそこかしこに足跡があるのに気づいた。

 新しい、まだ最近ここにきたらしい足跡がいくつかある。

 

 誰かが、ここにきてる?

 

 なんのために?

 

 足跡をたどるように建物内を調べると、古い変色した段ボール箱に混じって、いくつか新しい箱もあった。

 誠は、こんな時のために持ってきていた軍手をつけ、新しい段ボールを開けた。

 そこには、新聞紙にくるまれた棒状のものが、何本もあった。

 新聞も最近の日付のものだ。

 誠は、新聞の包みを開けて中をみた。

 中にあったのは、数百グラムの金ののべ棒、いわゆるインゴットと呼ばれる純金の塊だった。

 

 これは、盗品か、なにかか?

 

 どうしてここにそんなものがあるんだ?

 

 続いて誠は、ほかの段ボールも開けてみた。

 そこには、今度は新聞紙に包まれた腕時計がいくつもでてきた。

 ブレゲ。パテック・フィリップと言った誠が名前しか知らないような1本、数100万するような超高級時計がむき出しのまま、新聞紙に包まれている。

 

 これもまたKさんが追っていたものなのか。

 

 ふいに至近距離で、爆発音? がした。

 音がした方に目をむけると、あきらかに日本人ではない浅黒い肌をしたヒゲ面の青年が凶器を手に、誠の背後に立っていた。

 男の手の中の拳銃は、誠に銃口がむけられていた。

 誠は両手の平いてを上にあげて、男の方をむいた。

 

「警察か?」

 

 男は流暢な日本語できいてきた。

 

「そうだ」

 

 誠は、とっさにウソをついた。駆け引きのつもりだった。警察だとウソをついて相手を動揺させようと思った。

 外国人労働者も多いこの土地では、外国人による犯罪も多いのだが、さすがに警察官相手に暴行事件を起こすものはそう多くないはずだ。

 誠はなんとかして相手に引き金をひかせたくなかった。

 

「これは盗んだものだろう。

 調べはついてるんだ」

 

 続けて、はったりをかました。

 このまま、携帯で刑事たちをここに呼べればいいのだが。

 男が目を伏せた。

 

 しまった!!

 

 誠が後悔した時には遅かった。

 男は、誠にとっては悪い方へ決心したらしい。

 男が拳銃を上着にしまって、拳で誠に殴りかかかってきた。

 とりあえず、ここで誠を痛めつける気らしい。

 

「待て、やめろ!!」

 

 誠は男を押さえようと手をのばした。

 男は両腕をのばし、今度は誠の首を締めはじめた。

 

 ぐうっ。

 

 誠は床に倒れ、馬乗りにまたがった男にいいようにされている。

 

 やばい。

 

 このまま、僕は死んでしまうかも。

 

 意識が遠のきかけたその時、

 

「警察だ!! 動くな!!」

 

 扉が勢いよく開き、大きな声が響いた。

 誠の上の男の動きがとまった。

 

「鈴木さん。ムチャしないでくださいよ」

 

 誠の横にきた顔なじみの刑事が、誠を抱き起こしながら、耳元でささやいた。

 

「あと一歩遅れていたら、危なかった。

 もう少し早く電話してくださいよ」

 

「電話? 僕は、電話してないですよ」

 

「鈴木さんの携帯から、電話きましたよ。

 ワン切りはやめてくださいよ。

 まったく。

 念のために駆けつけてよかった」

 

 この日、後で、誠が自分のスマホを確認すると、ちょうど、誠が小屋へ入ったくらいの時間に、警察署への発信記録が残っていた。

 もちろん、誠は発信していない。

 逮捕された男の証言で、廃屋にあった金や時計は、Kが追っていた不良外国人グループが、盗んできたものだったのが判明した。

 男によると、小屋の鍵は自分が施錠し、鍵も持っているのに、あの日、様子を見に行くと、誠が中にいたので、衝動的に殺そうと思ったらしい。

 男は、Kの事故についての関与とM家との関係も否定してが、現在、拘置所にいる、Kを殺害した可能性がある男とは、知り合いであるのを認めた。

 誠は、この日から数日後、今度は、Kの息子が逮捕されたことによって、さらに深く事件に関わることになる。


   END

☆☆☆☆☆
 
 70話めは以上です。
 
 この100物語は、私が聞いたり、体験してきた怪談と創作のミックスみたいな感じです。
 
 こうした探偵もの、刑事もの、を書いていると、この100物語が終了したら、霊感探偵!! 鈴木誠を主人公にして、美少女キャラたちの登場する新シリーズを書いたら、どうだろう? なんてことを周囲から言われております。

 読者のみなさん、どうでしょう? 

 霊感探偵鈴木誠。読みたい方、おられますか?
 
 
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