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脳出血した中高年のための怪談100物語

100-62 水

100-62 水 スーパー銭湯で見ず知らずの年配の男性に声をかけられた。 かなり太った体格のいい男性で、腹部に大きな手術の痕があった。 相手はどうやら知り合いとカン違いして、誠に声をかけてきたらしい。 「いやいや、すみませんでした。 雰囲気がよく似て…

100-61 1人稽古

100-61 1人稽古 Kがその空手道場で内弟子をすることを決めたのは、そこの道場主が流派の総本部の内弟子出身で、空手道に人生をかける姿勢に憧れたからだった。 道場で寝起きして、自分の鍛錬と道場生の指導、事務仕事、あれやこれやをして日々をすごす。 も…

100-60 オススメ

100-60 オススメ 「この店は、とにかくヤバイんで、鈴木先生をぜひ一度、連れてきたかったんですよ」 知り合いのMの青年に勧められて、誠はMと近所の中華料理屋へ行くことになった。 Mによると、この店はへたな霊現象よりもよほどヤバイのだという。 「ま…

100-59 シャッター

100-59 シャッター 盲人用の眼鏡と呼べばいいのだろうか。 杖をつきながら、その黒い眼鏡をした男性が、1人で訪ねてきたので、誠は、驚いた。 「霊能者の鈴木誠先生ですね。 いえいえ、御構いなく、周囲の方にご迷惑をおかけしない程度には、みえているつも…

100-58 ブツ

100-58 ブツ 深夜のドライブといえば聞こえがいいが、地元の旧友のグチに付き合わされただけであった。 誠は、学生時代からの知り合いのWが運転する車の助手席にいた。 いい年をした男2人の、面白みのないドライブだ。 Wのグチは、仕事にまつわるもので、…

100-57 殺す

100-57 殺す 旦那さんがまじめな人だというのは、説明されなくてもわかっていた。 70才をすぎたSさんは、旦那さんと2人で小さなうなぎ屋さんを経営して、生計をたてている。 誠のところへ相談してきたのは、その奥さんだった。 2人が店舗兼住居にしている一…

100-56 落武者

100-56 落武者 独身OLのKさんが、この部屋はでると初めて感じたのは、入浴中だった。 ユニットバスの小さな浴室で、洗い場にでて髪を洗っていたら、自分以外の誰かが、後ろからKさんの髪をいじっていたという。 Kさんは驚いた。 鏡をみると、Kさんの後…

100-55 死神

100-55 死神 「死神って本当にいると思いますか? ぼくは思います。 ええ。 そうです。 それらしいヤツと会った経験があるんです。 貧乏神とか疫病神でなくて、死神です。 会った瞬間に、こいつが、それだってわかりました。 蛇に睨まれたカエルじゃないです…

100-54 トンネル

100-54 トンネル そのトンネルにまつわる噂はたくさんある。 幽霊がでると噂されている、そのトンネルは旧トンネルであり、現在はほとんど使われていない。(これは事実である) 旧トンネルの脇に、いつ建てられたのかもわからない古い木造の小屋がある。(…

100-53 疑惑

100-53 疑惑 職業が拝み屋だと話すとそれだけで、いろいろなイメージを抱く人がいる。 いかがわしいインチキで、金を儲けようとしている不貞の輩と思われる時もある。 その日、誠は知り合いに飲み会に誘われて出席していた。 古くからの友達が、他のもとに、…

100-52 競争

100-52 競争 「霊がみえたりする才能って遺伝するのかしら」 誠は近所に住むOさんに、何気なくたずねられた。 いわゆるご近所さんなので、朝、ゴミを置きに行くときに、あったりするのだ。 Oさんには双子の娘さんがいる。 Oさんが言うには、ウチの娘たちには…

100-50 寺院死

100-50 寺院死 「これは私が海外へ旅行した時の話です。 旅行会社のツアー旅行で、オプションで現地での寺院めぐりがあったので、私はそれにも参加することにしたんです。 歴史のある有名なお寺で、建物自体にも文化的な価値がある場所でした。 私は彼と一緒…

100-51 死に顔

100-51 死に顔 「私の母の死は壮絶でした」 母親の死に疑問を持っているというMさんに、誠は、「ちょっと話を聞いてもらえますか?」と頼まれた。 ただ話を聞くだけなら別に無料で構わない、と誠がこたえると、「私の話を聞いて鈴木さんになにかできること…

100-49 海獣

100-49 海獣 誠の郷里の街は、湖と密接している。 日本でも珍しいタイプの、もともとの淡水の湖に、地形の変化で外海が流れこんだもので、地理的にはほぼ湖でありながら、海の生物も生息するようになった。 うなぎやフグの捕れる湖として、周囲にはそれらを…

100-48 測定

100-48 測定 幽霊がでる道というのは、どこの地域にもあると思う。 誠が住む地域にも全国的に有名な幽霊トンレルと、事故車が続出する山道があった。 自宅からそう遠くないところにあるので、誠は、たまにそれらに様子を見に行く。 有名な心霊スポットだが、…

100-47 夜這い

100-47 夜這い 誠は地域の介護施設に、ボランティアとして参加している。 介護士として、施設にいる老人たちの食事、排泄、入浴を手伝ったりするのが、主な仕事だ。 なのだが、最近は人手不足で正規職員ではない、ボランティアの誠にも夜勤のシフトに入って…

100-46 爆発

100-46 爆発 「本当に人にお話するのは、どうかと思うような体験なんですよ」 その日の依頼人は、友人に紹介されて、誠のところへきたそうで、そもそも自分は、霊能者のところへなどくる気はなかった、とはっきりと口にした。 「お話して、どうにかできるこ…

100-45 もしもし

100-45 もしもし いまは40代のTさんが子供の頃の話だ。 Tさんは女性である。 Tさんのお父さんは、反社会的勢力の幹部だった。 過去には懲役刑を受けたこともあり、全身に入れ墨を入れていて、手の指は何本かなかった。 お父さんは、長い刑を終えた後は、…

100-44 予感

100-44 予感 深夜、台所の床に横になっていた。 夏だった。 寝苦しくて、なんとなくそうしていただけだ。 フローリングの木の床がひんやりしていて、気持ちよかった。 ゴロゴロと体のむきをいろいろかえてみた。 そのうち、なにか聞こえるかな? と興味がわ…

100-43 戦車

100-43 戦車 新しい戦争がすぐ側まできているかもしれない。 現在よりも、40年ほど前、古い戦争の記憶が町の各所に、まだまだ生々しく残っていた頃、私は、どこにでもいる普通の子供だった。 21世紀のあれこれうるさい現在から考えるとありえないような建物…

100-42 呪殺

100-42 呪殺 相手を呪い殺すような呪力の持ち主。 そんなやつがいるとして、どうにかできるか? 依頼人からそうもちかけられ、誠はすぐにその場を逃げ出したくなった。 拝み屋の看板をあげて生活し、霊能力があるのは自覚してはいるが、それを人と競い合う気…

100-41 ゴミ袋

100-41 ゴミ袋 誠がコンビニエンスストアの雇われ店長をやったのも、本業の拝み屋だけでは、生計が立ちぬかないからであった。 しかし、ずっとというのも無理なので、とりあえず、3か月の間だけ、ということでオーナーに断りをいれて、誠はコンビニの店長に…

100-40 カルトとカリスマー5

100-40 カルトとカリスマー5 誠が退会してすぐ、会は分裂した。 先日まで誠が所属していた地元の支部は、I支部長を中心として信徒たちが一致団結して、これまでの会の指導部とは袂をわかって、国内のいくつかの元支部と手を組んで、新会派を結成した。 すで…

100-39 カルトとカリスマ-4

100-39 カルトとカリスマ-4 Iからの誘いに誠はすぐに返事はしなかった。 できなかった。 宗教団体でも新団体の旗揚げや分裂や合併などは、よくある。 幼い頃から会の信徒だった誠は、同じ支部にいた信徒たちが会を離れ、他の団体の信者になったり、時には宗…

100-38 カルトとカリスマ-3

100-38 カルトとカリスマ-3 古寺での行を終えて、支部内でのIのカリスマ性は一気に高まった。 Iは口先だけでなく、体を張って信仰に打ち込んでいる。 言動一致の信頼できる人間だ、みたいな評価が支部内では普通になりつつあった。 Iを慕う若い信徒たちは…

100-37 カルトとカリスマ-2 

100-37 カルトとカリスマ-2 Iが戻ってきて支部の雰囲気が変わった。 支部の信徒が月に一度集まる会合も回数が増えて、熱心な信徒は週に何度も集まるようになった。 Iは、ただみんなの前で説教するだけでなく、一緒にハイキングや登山にでかけ、飲み会やバー…

100-36 カルトとカリスマ-1 

100-36 カルトとカリスマ-1 時系列的には、誠が年上の霊能者T(100-19~23 霊能者1~5)と出会った直後ぐらいの話である。 当時、誠は自分の人とは違う能力を感じてはいたが、それをどのように生かせばいいのか、そうした能力を自分が持っていることを人に話…

100-35 秘密-2

100-35 秘密-2 姉とは、あまり仲が良くなかった。 亡くなった人のことを悪く言うつもりはないけれども、自分と姉の生き方はあわなかった。 平凡に生きて、運が良ければ、公務員になれればなぁ(結局なれなかった)ぐらいで生きてきたぼくに対して、姉は、破…

100-34 秘密-1

100-34 秘密-1 「これは、ほんとに、誰にも誰にも言うなよ。 俺、実はな、昔、友達の家に遊びに行った時に、そこから電話して、女を呼んだ。 知ってる女さ。 昔の話だぜ。 俺もその友達も学生で、その女も同じ高校で、まぁ、知り合いだった。 その女、XXんで…

100-33 虫

100-33 虫 誠のところへ相談にくる客は、もう、その相談にくる時点で、おかしくなっているものも多い。 そもそも、霊能者のところにわざわざお金を払って相談したい、というくらいだから、常軌を逸した悩みを持っているのは、あたりまえで、そのうえで、その…

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